前回の話

 七菜を高山さんに預けて調教をしてもらう……正直なところ、あまりピンときていなかった。七菜とはまだ結婚もしていないし同棲もしていないので、当然別々に暮らしている。
 週末に泊まったりはするが、一緒の暮らしをしているわけではない。なので、預けるという言葉に違和感があった。

 でも、実際に預かり調教が始まると、僕の考えは甘かった事に気がつかされた。七菜は、高山さんの家で暮らすようになった。そして、僕とのデートはなくなった。
 今までは、普通に大学帰りにデートをしたり、週末を一緒に過ごしていた。それが、大学で昼を一緒に食べることしか出来なくなってしまった……。


 今日は、学食で一緒に昼を食べていた。いつもは友人が一緒な事が多いので、調教の話はほとんど出来ない。今日は、二人きりなので話を聞いた。
 と言っても、周りに人がいるのであまり詳しくは聞けない。でも、すでに預かり調教が始まって3ヶ月以上経っている。
「うん。順調だよ。でも、どんなことしてるかは言えないの。ゴメンね。でも、そろそろ優くんに報告しないとなって言ってたよ。楽しみにしててね。きっと、驚くことがいっぱいだよ」
 七菜は、そんなことを言ってきた。その顔は、少し上気したようになっていて、興奮しているような感じだ。僕は、ドキドキしていた。そして、何をしているのか教えてくれと頼んだ。

「え? ナイショだよ。楽しみにしてて。優くんが喜ぶことばっかりだから、期待して良いよ」
 七菜は、イタズラっぽく笑った。なんというか、七菜はフェロモンが出ているような雰囲気になった。前は、ただの可愛い女の子という印象だった。
 それが今は、妖艶とも言える雰囲気が溢れているように感じる。何が変わったのかよくわからないが、目が変わった気がする。
 純情な女の子の目から、色気の溢れる大人の女性になったように感じる。

 僕は、会話しながらも勃起していた。すると、いきなり股間を脚で触られた。テーブルの下で、七菜が脚を伸ばして爪先で僕の股間をまさぐっている。
「フフ、やっぱり固くなってるね。でも、自分でしちゃダメだよ。ちゃんと恋人としないと、ヤキモチ焼かれちゃうよ」
 僕の股間をグイグイと押しながら言う七菜は、やっぱり妖艶な笑みを浮かべているように見えた。それにしても、こんなに印象が変わるものだろうか? 一体、どんな調教をされている? 想像も出来ない。

 僕は、あのオナホは使っていないと答えた。
「え? どうして? 手でしてるの?」
 七菜は、声を潜めながら言う。周りの目を気にしているのだと思うが、騒がしい学食でそんなに気にしなくてもいい気はする。

 僕は、手でしていると告げた。オナホを使うのが惨めすぎるので、手でしていると……。
「変なの。だって、恋人でしょ? 私より良いんでしょ? ちゃんと使ってあげないとダメだよ」
 七菜は、からかうように言う。でも、からかっているような雰囲気ながらも、真剣に言っているようにも感じてしまった。
 僕は、いつ帰ってくるの? と聞いた。デートもしたいと告げた。
「それも、今度会った時に教えるね。デートは、ダメだよ。今は、私は高山さんの所有物だから。優くんにも私にも、所有権はないんだよ」
 七菜は、明らかに興奮した顔になっている。今のこの状況に、強い興奮を感じているようだ。でも、僕もそれは同じだ。射精寸前になっている……。

「良いよ、出して良いよ」
 そんな風に言いながら、足の指で器用に僕の股間を刺激してくる。でも、さすがにこんなところで射精なんて出来ない。
「頑張るね。じゃあ、教えてあげる。私、ピル飲まされてるんだ」
 七菜は、うわずった声で言う。僕は、一気に射精寸前になってしまった。でも、必死でイクのを堪え続けた。
「フフ、凄く固いよ。ヘンタイだね。こんなところでイキそうなんだね」
 七菜は、いじめっ子の顔だ。ピルを飲まされている……中で出されてるの? と、今さらな事を聞いてしまった。すでに、七菜は何度も他人に中出しをされている。

「そうだよ。いつも中に出されてるよ」
 七菜は、僕の目を見つめながら言う。僕は、もう限界だ。射精を堪えることが出来ない……。
「フフ、どヘンタイだね。良いよ、イケッ!」
 七菜に命令をされながら、僕はパンツの中にぶちまけてしまった……。

「あ~あ、イッちゃった。こんなところでヘンタイだね。じゃあ、連絡あるの楽しみにしててね」
 七菜は涼しい顔で言うと、トレイを持って返却口の方に向かう。そして、振り返ることもなく学食を出て行った。

 僕は、放心状態でグッタリしてしまった。一体、どんなことをされているのだろう? 強すぎる不安を感じるが、僕のペニスは射精したばかりなのにいきり立ったままだった……。

 そして、なんとか勃起を落ち着けると、僕も学食を出た。こんな状況を、僕は本当に望んでいたのだろうか? 自分でも、よくわからなくなってしまった。

 そして週末、七菜からメッセージが届いた。今から来て欲しいという内容だった。呼ばれた先は、七菜の家でもなければホテルでもなく、高山さんの自宅だった。
 僕は、ドキドキしながらもすぐに返信をして高山さんの自宅を目指した。電車を乗り継いで到着した高山さんの自宅は、渋谷駅から歩いて行ける距離のタワーマンションだった。

 タワーマンションなんて、当然入ったこともない。自分には縁のない場所だと思っていた。エントランスにはフロントのようなものがあり、大きな会社の受付みたいな感じだ。
 にこやかに受付の女性に声をかけられ、高山さんの部屋に行くと告げた。
「お待ちしてました。どうぞ、奥のエレベーターで」
 そんな風に言われて、僕はキョドりながら、ありがとうございますと答えた。そして、指示されたとおりのエレベーターに乗ると、ボタンを押してないのにすでに目的の最上階のボタンが光っていた。

 エレベーターの操作部分には、電子マネーの決済する端末をかざすようなものがあり、おそらくそこにカードか何かをかざすみたいだ。
 僕は、緊張しながら長いエレベーターの時間を過ごした。タワーマンションの最上階なんて、一体どんな人種が暮らしているのだろう?
 普通のサラリーマンには絶対に無理だということはわかる。そして到着すると、廊下を歩いた。廊下も、僕の知っているマンションの廊下とはまったく違う。こんな場所が絨毯である必要があるのだろうか? 汚れたら、どうするんだろう? そんなことを考えながら廊下を歩いた。

 そして、やたらと大きなドアの前に立つと、インターホンを鳴らした。
「優くん、早かったね。開いてるからどうぞ」
 七菜の声がして、少しホッとした。僕は、すぐにドアを開けて中に入った。玄関が広い……横に小部屋みたいなものもあり、靴やブーツが並んでいるのが見えた。そして、広い廊下の奥から、七菜が声をかけてきた。

「凄いでしょ? こんなお部屋に住んでるんだよ」
 声をかけてきた七菜は、コスプレみたいな格好をしていた。パステルカラーの青色のメイドスタイル。一見、すごく可愛らしい。
 でも、上と下がセパレートになっていてヘソも見えているし、太ももにはストッキングみたいなものを履いていて、ガーターベルトみたいなものでスカートの中に繋がっている。

 エロ可愛らしいというか、渋谷のハロウィンイベントでこんなメイドが歩いているだろうなと言うイメージだ。僕は、あっけにとられて何も言えない。
「じゃあ、こっちだよ。そんなに緊張しないで」
 そう言って、僕をエスコートしてくれる。後ろを向くと、尻尾が生えているのがわかった。スカートの中から、可愛らしいピンク色の尻尾が生えている。

 七菜はメチャクチャ可愛い女の子なので、こんなコスプレが凄く似合っている。でも、こんなコスプレをするタイプではなかった。

 広すぎるリビングに通されると、二組あるソファとテーブルセットの奥の方のソファに座る高山さんが、
「早かったね。今日は、わざわざ来てもらってありがとう」
 と、にこやかに声をかけてきた。相変わらず、優しそうな雰囲気。学校の先生みたいな印象だ。僕は、挨拶をして彼の対面に座った。
 七菜は、すぐに飲み物を用意してくれる。本当に、メイドさんみたいな働きぶりだ。

 七菜は、彼に飼育されて調教されている。何をしゃべったら良いのか、言葉が出てこない。僕は、ドギマギしながら、逃避するように紅茶を飲み始めた。

「七菜の調教も、かなり進んだよ。今日来てもらったのは、この先のことを決めてもらおうと思って。この先の調教は、肉体改造も含めて不可逆的に進める予定だから、意思の確認をしたくてね」
 高山さんは、淡々と話をする。こんな会話をしている時も、七菜は高山さんの横に立ったまま待機している。
「肉体改造……どんなことをするんですか?」
 僕は、声が震えている。想像も出来ないことを言われてしまった……。

「豊胸とかタトゥーだよ。クリトリスも改造するつもりかな」
 高山さんは、あっさりと言う。なんというか、まるで他人事だ。僕は、思わず七菜を見た。そして、震えるような声で、七菜はどうしたいの? と聞いた。
「したい。もっと、ご主人さまの好みの奴隷になりたい」
 七菜は、落ち着いた口調だ。僕は、頭を殴られたような衝撃を受けながら、少しフリーズをしてしまった。

 僕と別れるつもりなの? と聞いた。どう考えても、高山さんのものになりたいと思っているように感じたからだ。
「ど、どうして!? 私のこと、嫌いになったの!? 優くん、怒ってるの?」
 七菜は、一瞬で泣きそうな顔になった。僕は、七菜のその変化に理解が追いつかない。慌てて、怒ってないし大好きだし別れるつもりもないと告げた。
「本当に? 良かった……嫌われちゃったのかと思った」
 七菜は、涙目になっている。よくわからないが、安心はした。

 僕は、高山さんのことが好きになったのかと思ったと告げた。
「そんなことないよ。私が好きなのは、優くんだけだよ。ご主人さまは、そういうのじゃないから」
 七菜は、よくわからないことを言う。でも、七菜を失う危機は脱したのかな? と、少しだけホッとした。

「どうしますか? 優一くんの考えで決めていいと思うけど」
 高山さんは、そんなことを言ってきた。もちろん、ダメに決まっている。肉体を改造されてしまったら、後戻り出来ない。
 タトゥーなんて掘られたら、将来産まれてくる子供のためにも良くないに決まっている。僕は、ダメだと告げた。
「どうして? 優くん、きっと喜ぶはずだよ。じゃあ、今から七菜がどんな風にしつけられてるのか見て。ちゃんと見た上で、私の気持ちも理解してほしい……」
 七菜は、すがるような顔で言う。ますます意味がわからなくなってしまった。

 僕の事を愛してくれているのは伝わってきた。でも、僕の意に反してまで、高山さんの色に染まりたい……どう判断すれば良いのか、まるでわからなくなってきた。

「そうだね、見て決めてもらった方が良いだろうね」
 高山さんは、穏やかな顔だ。
「ご主人さま、今日は全部入れてください。優くんが見てるなら、きっと頑張れます」
 七菜は、急に媚びた牝の顔になってしまった。僕は、七菜の変化にドキドキしっぱなしだ。そして、高山さんは立ち上がって歩き始めた。
「優くん、しっかり見てね。七菜の本当の姿を……」


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