前回の話

 会社の屋上で、ノートパソコンにイヤホンを繋いで音声を聞く……嫁の浮気の音声を……。俺は、やめておけば良かったと後悔し始めている。
 どうしてこんな事をお願いしてしまったのだろう? 知らなければ良かった。なにも知らずに、そのまま過ごしておけば良かった。そんな後悔でいっぱいだ。

「どうしよう。気持ちいいの。こんなに気持ちよくなったことないよ。剛史さん、好き……もっと好きになった。今日のデートで、剛史さんの事忘れられなくなった……」
 純子は、あえぎ声混じりに言う。


もう、本気で言っているとしか思えない感情のこもった声だ。
 借金の肩代わりのお礼に、ちょっとサービスをしている……そんな感じではなくなってしまっている。

「純子ちゃん、俺、アイツがもっと借金すればいいのにって思ってる。ごめんね、でも、そう思ってる」
 剛史は、苦しげに言う。俺が聞くことをわかった上で、こんなセリフを言っていると思うと、正直かなり複雑な気持ちだ。
「ううん。私も……そう思ってる。でも、そんなの関係なしで、またデートしたいって思ってる……ダメなのに、そう思っちゃう」
 純子は、悩んでいるような声だ。葛藤しているのが伝わってくるような、深刻な声だ。
「純子ちゃん、好きだ。ずっとずっと好きだった」
「好き。私も大好き。キスして……いっぱいキスして」
 そして、声が聞こえなくなる。その代わり、時折純子のくぐもったうめき声と、ベッドがきしむような音が響く。俺は、強い危機感を感じながらも、また借金作っても安心だなと思ってしまった。我ながら、クズだと思う。でも、二人もクズだ……。俺を裏切ってこんな事をしている。俺のことを批難することなんて出来ないと思う。

「固いよ。カチカチになってきた。こすれて気持ちいいの……剛史さんの、もっと大きくなってる」
 純子は、感情のこもった声で言う。急速に気持ちが傾いていくのがわかるような声だ。
「もっと感じて。俺ので狂って欲しい」
「突いて。剛史さんの大っきいので、奥まで突いてっ」
 純子は、声がうわずりすぎてかすれ気味だ。すると、すぐに純子のあえぎ声が変わった。
「アンッ、うぅっ、あっ、あっ、気持ちいいっ! 剛史さんの、奥にずっとくっついてるのっ!」
 純子は、一切声を抑えようとはしていない。俺の目の前で剛史とした時は、ほとんど声を出していなかった。あの時も、本当はこんな風にあえぐほど気持ちよかったのだろうか?
 俺のギャンブルのせいで、純子にとんでもないことをさせてしまっている。反省の気持ちは大きいが、どうしてもやめられない……。

 純子のあえぎ声はさらに大きく追い詰められたようになっていく。剛史とのセックスは、まだ数回程度の話だ。セックスは、お互いに慣れてこないと本当の気持ちよさは味わえないものだと思う。
 そんなに相性が良いのだろうか? 俺よりも、剛史との方が相性が良い? 嫉妬と敗北感を感じてしまう。
「痛くない? もっと浅くしようか?」
 剛史は心配そうに声をかける。
「平気だよ。気持ちいいの。もっと奥まで強く当てて。こんなの初めて……初めて剛史さんのが入ってきた時、それだけでイッちゃったんだ。必死で声を我慢してた……顔にも出さないように、我慢してたの」
 純子は、衝撃的な告白をする。あれは、必死で我慢していた態度だった……俺の見ている前で、初めからイカされていた……裏切られたような気持ちだ。
 でも、考えてみれば純子は2回目の時にはもうイカされていた。やっぱり、相性は良いんだろうなと思う。

「そんなに気持ちいい? アイツと、そんなに違うの?」
「うぅ……違うの……。こんなに奥までしてもらったことない……」
 純子は、俺のことを言われて声が小さくなる。罪悪感を感じているような声になった。そんな態度にホッとする気持ちもある。でも、心の奥底で、純子もこんなに感じてるなら、こんなに楽しんでいるのなら、また借金をしてもいいか……と思う気持ちもある……。

「奥、気持ちいい? 当たると気持ちいい?」
 剛史は、どことなく得意気な声だ。
「気持ちいいの……ダメなのに、すごく気持ちいい……こんなの知らなかった……もう、忘れられないよ。剛史さんの形に変わっちゃったもん」
 純子は、あえぎ声をあげながら苦しげに言う。罪悪感と快感の狭間で、葛藤しているのが伝わってくる。でも、そんなの気にせずに感じれば良いのに……と思っている。純子も楽しんでくれた方が、俺の罪悪感も薄くなる。アイツとのセックスに狂ったところで、純子は俺の元から居なくならないという確信もある。

「もっと変える。純子ちゃんの中、俺の形にする」
「して。もっと剛史さんの形に変えて。好き。大好き。いつも剛史さんのこと考えてるよ」
 純子は、思いの丈をぶちまける。彼女のこんなに感情のこもった声は、久しく聞いていない。
「俺もだよ。いつも純子ちゃんのこと考えてる。俺の恋人になってくれないかなって、いつも願ってる。
「今は恋人だよ。大好き。エッチして、もっと好きになった。心と身体が、剛史さんにどんどん傾いてくの……」
 純子は、とんでもないことを言い続ける。剛史も、よくこんな事が言えるなと思う。そして、この録音を渡してきたことにも驚く。
 俺なら、ナイショにした。こんな音声は、とてもではないが聞かせられないと思うはずだ。もしかして、本気で純子を奪うつもり? 今さらながら、少し怖くなってきた。

「あぁ、純子ちゃん、それヤバい」
「もっと感じて。フフ、カチカチになってる」
「純子ちゃんも感じて」
「あっ、ダメぇ、うぅ、あっ、それダメ、ヒィ、うぅっ、イヤッ、あっ、イッちゃう」
「良いよ、何回でもイッて」
「イクっ、イクっ、剛史さん、大好きっ!!」
 音声だけなので、悪い想像ばかりが大きくなる。一体、どんなセックスをしているのだろう? 俺にもしないようなことをしている? 嫉妬と不安で、居ても立っても居られなくなる。
 純子は、こんなセックスをした後に、俺ともセックスをした……剛史に狂わされた直後に俺として、どう思ったのだろう? あっけなくイッてしまった俺のことを、情けないと思ったのだろうか? あまり気持ちよくないと思っていたのだろうか?

「すごいね、ビクビクしてるよ。大丈夫?」
 剛史は、優しい声で聞く。
「大丈夫じゃない……こんなの、すごすぎるもん……。ねぇ、キスして。いっぱいキスして。入れたまま、いっぱいキスして欲しい」
 純子は、甘えきった声だ。そして、また無言になる。完全な無音だ。俺は、やきもきしながら声が聞こえてくるのを待った。そして、どうしてこんな事をしているのだろう? と、少し冷静になった。もう、ここまで聞けば充分のはずだ。

「うぅっ、うぅ〜〜っ」
 唐突に、純子のうめき声が聞こえた。
「だ、大丈夫?」
 慌てる剛史。
「……イッちゃったの。キスしてるだけで、イッちゃったの」
 純子は、恥ずかしそうに言う。
「マジで? そんなに気持ちよかったの?」
 剛史は、驚いた声だ。
「気持ちよかった……奥に当てられたままキスされると、好きって気持ちが加速していく……もう、剛史さんのことで頭がいっぱいだよ」
「嬉しいよ。ねぇ、次は後ろからしてもいい? 寝バックって、したことある?」
「え? 寝バックって?」
「こういうの」
「キャッ」
 剛史は、かなり積極的だ。どう聞いても、本気で純子をものにしようとしているようだ。

「こんな格好、初めてだよ。でも、よく抜けないね」
「長さが足りないと、出来ないかも」
「じゃあ、けんちゃんは無理だね」
「え? アイツのって、短いの?」
「う、うん。小っちゃいよ」
 純子は、口ごもるようになりながらも酷いことを言う。でも、事実は事実だ。

「じゃあ、初めての快感を植え付けちゃうね」
「……うん。剛史さんの色に染めて」
 もう、やめてくれと思った。これ以上はマズい……そんな危機感でおかしくなりそうだ。
「うぅああっ、あっ、こ、これすごいよ。こすれてる……あぁ、ダメぇ、こんなのイッちゃう。すぐイッちゃうよぉ」
「でしょ? 寝バックって、めちゃくちゃ気持ちいいんだって。俺も気持ちいいし」
「当たるの、奥と気持ちいいところ、両方当たってるのっ」
 純子は、ほとんど悲鳴だ。バックでしたことはある。純子は、すごく感じていた。バックは好きな体位なのだと思う。でも、寝バックはしたことがないし試そうとしたこともない。言われているように、俺のではまず抜けてしまうと思う……。

「良いよ、いっぱいイッて。俺ので狂って」
「もう狂ってるっ、イクっ、イッちゃうっ! うぅああっ」
「すごく締まってきたよ。オマンコ締まってる」
「イヤァ、ダメなの、こんなのダメ、戻れなくなる、うぅあっ、あっ、イク、イクぅっ」
「もっと感じてごらん」
 剛史は、まるで調教でもしているような感じになっている。想像以上に、剛史は経験が多い? 見くびっていたのかもしれない……。

「ダメぇ、耳噛んじゃダメぇ、うぅっ、気持ちいいの、それ凄いのっ! あっ、あっ、アンッ、無理っ、無理っ!」
 純子は、切羽詰まったような声だ。こんなに乱れる純子は、見たこともなければ想像したこともない。ペニスが大きければ、俺でもこんなに感じさせることが出来るのだろうか?

「すごいよ。子宮降りてきてる。もっと感じて良いからっ」
 剛史も、興奮しきっている。無我夢中という感じだ。そして、さっきからベッドのきしむ音と肉がぶつかる音が大きく響いている。
「イヤッ、イヤァ〜ッ、もうイッてるの、イッてるのにイキそうになってるっ、うぅあっ、あっ、おぉっ、んおぉっ、おぉおんっ」
 純子は、あえぎ声とは思えないような野太い声が混じる。こんなに追い詰められるような声をあげるものなんだろうか? そんなに気持ちいいのだろうか?
「あぁ、イク、純子ちゃん、イクよ。純子ちゃんも一緒にっ」
「イッてるっ! もうイッてるのっ! イキっぱなしになっちゃってるのっ」
 純子は、泣いているような声も混じっている。気持ちよすぎて泣くなんて、あり得るのだろうか? そして、剛史はうめきながら射精を始めた。純子も、悲鳴とうめき声をあげながら叫び続けている……。

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