前回の話

「えっ!? またなの!? 今度はいくらなの?」
 純子は、俺からの告白を聞いて驚いた顔になった。あきれているというか、本当に驚いているような顔だ。俺は、包み隠さずに正直に話した。
「もう……ギャンブルしないって言ったのに。でも、今度はデートなの? 遊園地? そんなので良いの?」
 純子は、驚いたような顔だ。そうだよと言うと、
「なんか、嬉しいかも。遊園地なんて、全然行ってないもんね。けんちゃん全然連れてってくれないし。じゃあ、楽しんでくるね」
 と、嬉しそうに承諾した。確かに、エッチなしで15万なら断る理由もないと思う。まして、遊園地で遊べるとなれば、純子にとっては最高なんだと思う。


 そして、あっという間に週末になった。純子は、いつも以上に可愛らしい。メイクも珍しくしっかりとしているし、髪もフワフワでクルクルだ
 見とれている俺に、
「フフ、可愛い?」
 と、少し照れくさそうに言う……。俺は、黙ってうなずいた。さすがに、可愛くないとは言えない見た目だ。
「じゃあ、楽しんでくるね。けんちゃん、愛してる?」
 純子は、少し不安そうだ。俺は、愛していると告げた。そして、ゴメンと謝った。
「ホントだよ。こんな事繰り返してたら、本当に剛史さんのこと好きになっちゃうよ。良いの? それでも……」
 純子は、悲しそうな顔になった。俺は、これで最後だと言った。
「約束だからね」
 純子はそう言うと、剛史とのデートに出かけていった。俺は、不思議な気持ちだった。ただデートをするだけ……。すでに肉体関係のある二人が、デートをする。どうしてこんなにモヤモヤするのだろう? 目の前でセックスを見せられたのに、そっちの方がまだマシだと思う気持ちがある。

 純子が、剛史と一日遊園地でデートをする。それで俺のスロットの借金が消えるなら、なにも文句はないはずだ。それなのに、俺はずっとモヤモヤして落ち着かない時間を過ごしていた。
 いっそ、パチンコやスロットにでも行こうと思った。でも、さすがにそんな事をするのは最低だと思う。俺は、テレビゲームをしたり漫画を読んで過ごした。
 我ながら、最低な過ごし方だと思う。掃除をしたり洗濯をしたり、純子の役に立つことをするべきだと思う。でも、今頃楽しく遊んでいるだろうなと思うと、何もする気が起きない……。

 そして、夕方になってお腹が空き、レトルトのカレーを食べながら純子の帰りを待った。一切連絡はないが、こちらから連絡をするのも負けた気がする。
 そのまま22:00が過ぎ、不安が増してきた。もしかして、帰ってこない? そんな事を思い始めた頃、玄関で物音がした。
「ただいま〜。遅くなっちゃった。ご飯は食べたの?」
 純子は、少し慌てたように言いながらリビングに入ってきた。俺は、純子の姿を見て、セックスをしてきたなと直感した。

 上手く言えないが、表情に罪悪感と興奮が入り混じっている。そして、ほとんど落ちてしまっているメイクと、乱れた髪。
 結局、最後までしたんだなと理解した。
「ごめんね、ちょっとシャワー浴びてくる」
 純子は、少し元気がない感じだ。罪悪感を感じている? でも、俺は何かを言う資格なんてない。すると、スマホが鳴った。剛史からのメッセージだ。
 セックスをしてしまった事の詫びと、明日お金と録音を渡すという内容だった。俺は、自分でも思っていた以上にショックを受けていた。
 正直、セックスをしてしまう事は想定していた。そうなる可能性が高いと思ってもいた。でも、実際にそうなると、自分でも戸惑うほどにショックが大きい。

「ごめんね、遅くなっちゃった。待っててくれたの?」
 純子は、頭にタオルを巻いた姿で戻ってきた。髪を乾かすまもなく慌てて来てくれたみたいだ。俺は、悪かったと謝った。もう、ギャンブルは止めると誓った。
「今度は本当に止めようね。信じてるよ。愛してる」
 純子は、優しい笑みを浮かべて言った。俺は、遊園地はどうだったの? と、質問した。でも、本当に聞きたかったのは、最後までしたかどうかだ。
 もちろん、最後までしたのはもうわかっている。純子が、正直に言うのかどうかが気になっていた。
「楽しかった! すごく久しぶりにジェットコースターに乗ったよ。あんなに怖かったっけ?」
 純子は、ニコニコと楽しそうに言う。その他にも、フリーフォール的なアトラクションや、大きな船の中のレストランの話を続ける。
 無邪気に楽しそうに話す純子に、強い嫉妬心が湧いてきた。もしかしたら、セックスをしているのを見るよりも、強い嫉妬を感じているかもしれない。

「ねぇ、今度はけんちゃんと行きたいな。一緒にジェットコースターに乗りたい」
 純子は、真っ直ぐに俺の目を見ながら言う。愛情を感じるが、どこか罪悪感を感じているようにも見える。そして、純子は俺に抱きついてキスをしてきた。
 おやすみの軽いキスではなく、セックスの最中にするような激しく濃厚なキスだ。俺もすぐに舌を絡め始めた。なんというか、独占欲とか嫉妬心が燃え上がり、激しいキスをしてしまった。

「けんちゃん、もう本当にダメだからね。これ以上こんな事があったら、剛史さんのこと好きになっちゃうよ」
 純子は、そんな事を言いながら俺のパジャマを脱がせてきた。こんなに積極的な純子は、ほとんど記憶にない。俺を裸にすると、すぐに乳首を舐めてきた。それと同時に、ペニスもしごいてくれる。
「けんちゃん、気持ちいい? いっぱい気持ちよくなって……愛してる」
 純子は、やたらと愛していると繰り返す。浮気をした人間の典型的な行動に思えてしまう。俺は、すでに射精感を感じながらも、純子のパジャマを脱がせていく。
 ブラジャーをつけていないので、大きな胸があらわになった。本当にセクシーで良い身体をしている。結婚前は、本当にスリムで胸も小さかった。女性が理想とする身体という感じだった。
 今は、俺の好みに合わせようとしてくれているのか、けっこう肉付きが良くなった。胸も大きくなったし、太ももも太くなった。男の好む体つきになったイメージだ。

 俺は、すぐに純子の乳首にむしゃぶりついた。気持ちよさそうな声が漏れ始めるが、どうしても剛史とセックスをしていた純子を思い出してしまう。
 俺が招いたことなので、怒りの感情はない。嫉妬心とか独占欲が刺激されているような状態だ。いっそ、俺が寝取られ性癖で興奮出来れば良いのに……と思ってしまう。

 純子は、あえぎながらペニスをしごく。一体、今日はどんなセックスをしてきたのだろう? このまま俺にはナイショにするつもりなんだろうか? 色々なことが頭をよぎる。
 俺は、そんな思いを振り払おうと、純子に覆い被さっていく。コンドームもつけずにペニスを押しつけた。
「けんちゃん、愛してる。ずっとずっと一緒にいてね」
 純子は、潤んだような目で俺を見つめる。色々と葛藤しているみたいな顔だ。俺は、愛してると言いながら腰を押し込んだ。

 避妊具なしの生々しい感触。絡みついてくる秘肉の感触が気持ちよすぎて、つい声が漏れてしまう。
「けんちゃん、赤ちゃん欲しい」
 純子は、切なげな顔で言う。感情のこもったような言葉だ。ギャンブルで借金を作って嫁を貸し出してしまうような俺に、どうしてこんなにも愛情を持ってくれるのだろう?
 ダメな男に惹かれる女性? 申し訳ない気持ちが膨らむ。そして俺は、腰を振り始めた。純子は、嬉しそうにあえぐ。俺を見つめたままあえいでいる。
 俺は、その視線から逃れたい気持ちでキスをした。キスをしながら腰を振ると、純子が舌を絡めてきた。キスをしながらのセックスは、どうしてこんなに気持ちいいのだろう?

 俺は、あっけなく射精をしてしまった。
「フフ、赤ちゃん出来たかな?」
 純子は、幸せそうな顔で言う。俺は、そんなにすぐは無理じゃない? と言いながら、複雑な気持ちになっていた。結局、純子は剛史とセックスをしたことをナイショにするみたいだ……。
 
 翌日、昼に剛史と会った。剛史は、バツが悪そうな顔で、
「なんか、そういう感じになっちゃって……悪かったな」
 と言った。俺は、詳しく話を聞かせてくれと言った。
 剛史の話は、聞かなければ良かったと思うような内容だった。楽しく遊んでいるうちに、手を繋いで歩いたり、キスをしたそうだ。
 普通の恋人同士のように過ごし、どちらからともなくホテルに寄ったそうだ。剛史は、申し訳ないと言いながら15万と録音データの入ったUSBメモリを渡してきた。

 俺は、黙って受け取った。素直にありがとうと言いづらい気持ちだ……。そして、コーヒーを飲み終えて別れた。剛史は、
「また、いつでも声かけてくれよ」
 と言って去って行った。

 俺は、会社に戻ると屋上に行った。大きなビルだが、今どき珍しく屋上に入れる。ノートパソコンにUSBメモリを挿し、録音データを再生した。
 まさか、会社の屋上で純子のセックスの音声を聞く日が来るなんて、想像もしていなかった。
「なんか、ドキドキしちゃうね……ラブホテルなんて、すっごく久しぶりだよ」
 純子の緊張した声が響く。
「そうだね。俺も、何年も来てないよ」
 純子以上に緊張している剛史の声が響く。
「彼女とか、いなかったの?」
「うん。モテないしね」
「そんな事ないと思うよ。剛史さん優しい面白いし。今日も、本当に楽しかったよ。こんなデートが出来るなら、けんちゃんまた借金作っても良いかなって」
 純子は、おどけたように言う。
「ホント、ごめんね。なんか、金にものを言わせてこんなことしちゃって」
 剛史は、申し訳なさそうに言う。
「そんな事ないよ。いまここにいるのは、私がそうしたいって思ったからだよ。それに、お金のことなんかなくても、またデートしたいって思ってる……」
 純子は、ドキッとするようなことを言った。それは、浮気宣言のように聞こえる。
「い、いや、それはマズいよ」
 慌てる剛史。
「そうだよね……でも、またすぐに借金しそうだけどね」
 純子は、楽しそうだ。
「その時は、また声かけて欲しいな」
「声かけると思うよ。よろしくね。またデートしたいな」
 純子は、そんな風に言った。そして、急に声が聞こえなくなった。

「ずっとキスしたいって思ってた……嬉しいな」

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